イノベーションストーリーズ

プラネタリウム

地上に星空を創り、感動を届けたい
創業者の想いを受け継ぐ
プラネタリウム事業

目次

現在、世界に2700以上あるといわれるプラネタリウム。日本はそのうち約300施設が稼働中という、米国、中国に次ぐプラネタリウム大国です。その日本で、1958年、国産プラネタリウムを完成させ、広く一般に公開したのが当社でした。

それから60年以上にわたり、光学式プラネタリウム・デジタル投映機器の開発・製造から、コンテンツ制作、ドームシアターの設計施工、そして運営までをトータルに手がけるプラネタリウムの総合メーカーとして、世界各国に新しい価値を創造、発信しています。

※光学式プラネタリウム:星の並びに合わせて穴をあけた恒星原版を通った光を、レンズでスクリーンに投映する装置

一号機公開 横浜ドーム内

それは創業者の夢から始まった

世界で初めて光学式プラネタリウムが誕生したのは、今からちょうど100年前の1923年、ドイツのカールツァイス社の発明でした。その14年後の1937年、同社のプラネタリウムが大阪市立電気科学館(現・大阪市立科学館)に、日本で初めて設置されました。少年時代から星が好きだったミノルタの創業者、田嶋一雄は、ここに足しげく通ううちに、自社でもプラネタリウムを手がけてみたい、という想いを強くしていきます。

そんな田嶋の夢は、発明家、信岡正典氏と出会ったことで、実現に向けて一気に動き出しました。田嶋は信岡氏を嘱託として招聘。彼のプラネタリウム製造に関する知識と、自社のカメラ製造で培ったレンズ設計の技術を駆使することで、1958年、ついに国産初のレンズ投映式プラネタリウム装置を完成させたのです。そして兵庫県の遊園地・阪神パークで開催された「科学大博覧会」で公開、3か月で20万人を超える観客を集めました。

科学博覧会

1966年には初の量産モデルである「MS-10」が完成、当社のプラネタリウム成長期に貢献したベストセラー機となりました。2000年までに50台以上が納品され、そのうち十数台は今でも現役で活躍中です。また、MS-10をベースに輸出用OEM機として設計された「MK-Ⅱ」は、米国の各地に出荷されました。2017年にアカデミー賞で6部門を受賞した映画「ラ・ラ・ランド」では、ロサンゼルスのグリフィス天文台のシーンで、この機種が登場しています。

MS-10

地球を飛び出すプラネタリウム

事業が転機を迎えるきっかけとなったのは、1985年に開催された「科学万博つくば'85」でした。科学技術をテーマとした博覧会に向けて、全く新しいプラネタリウムを開発することになったのです。打ち出したコンセプトは「宇宙型プラネタリウム」。従来のプラネタリウムが地球上から見た星空を再現するのに対して、地球を飛び出して、太陽系内の他の惑星から見た星空を再現できる、というものでした。

その実現のために、社内のさまざまな部門から技術者が結集しました。それまで北半球と南半球の星空を投映する二つの球と、月や惑星を投映する装置が一体化していた機器を、一球式の恒星投映機と惑星投映機に分離。最先端技術を凝縮した一球式プラネタリウム「インフィニウム」を作り上げたのです。コンパクトでお客様の視界を遮ることの少ないプラネタリウムは、当時世界最大の直径25.6mの傾斜型ドームとともに好評を博しました。この頃から1990年代前半にかけて、特に大型館でのプラネタリウム導入がピークを迎え、当社の機械もどんどん導入数を増やしていきました。

インフィニウム

時期を同じくして、デジタルプラネタリウムの先駆けとして、米国のエバンス&サザランド社の「デジスター」が登場します。最初はモノクロのワイヤーフレーム映像でしたが、光学式プラネタリウムには不可能な、地球からの距離の違いによる、星々の位置の変化を再現することができました。地球を飛び立って進んでいくにつれ、オリオン座の形が劇的に変わっていく様子は、宇宙には奥行きがあるのだということを実感できる、新たな体験をもたらしたのです。

当社は、その後継機である「デジスターⅡ」と「インフィニウム」を融合した、世界初の統合型プラネタリウム「ジェミニスター」を開発し、1997年に一号機を設置しました。その後、複数のプロジェクターの画像をつなぎ合わせて、ドーム全体にフルカラー映像を投映する「SKYMAX」を発売。光学式プラネタリウムが再現するリアルで美しい星空と、全天周CG映像との組み合わせが新しいプラネタリウムのトレンドとなっていきます。

SKYMAX 配置図

この灯を消してはならない

つくば万博後、空前の科学ブームが到来。バブル期と重なったこともあって、全国の自治体が競ってプラネタリウムを建設、国内需要が一気に高まりました。しかし、1990年代半ばのバブル経済崩壊に伴う、公共予算削減のあおりを受け、プラネタリウム市場は冬の時代を迎えます。

日本のプラネタリウム新規設置数グラフ

折も折、数少ない民間運営施設であり、当時日本で2番目の集客を誇る東京・池袋のサンシャインプラネタリウムに、閉館の話が持ち上がっていました。その話を聞いた時、我々の胸には、同じ業界に身を置く立場として「このプラネタリウムの灯を消してはならない」という思いと、「本当に天文ファンや宇宙への興味を抱く人が減ったのだろうか」という疑問がありました。2003年6月のサンシャインプラネタリウム最終日には、満員の会場で閉館を惜しむ方々の気持ちを肌で感じると同時に、ぜひ存続させてほしいという多くの声を受け取り、ますますその思いを強くしたのでした。

そこで我々は、「サンシャインプラネタリウムの運営を自ら手掛けよう!」と決意します。世界に数社しかないプラネタリウムメーカーの中で、施設の運営まで手掛ける会社は皆無。もちろん運営のノウハウなどありません。当初は、社内でも反対論一色で、この決断は「まさに賭け」でした。

満天イメージ写真

ところが、当時さまざまな施設の閉鎖が相次ぐ中、メーカー自らによる復活計画は大変好意的に受け止められます。ちょうどその年の8月に経営統合を果たした新生コニカミノルタの明るい話題のひとつとして、さまざまなメディアの取材が相次ぎ、2004年3月、「サンシャインスターライトドーム“満天”」として、盛大にオープンの日を迎えることとなりました。

“満天”では、星空の美しさを存分に味わえる番組、迫力あるCG映像がドーム全天360度に展開する番組、アロマとともに鑑賞するヒーリング番組の3本立てという、一日にタイプの異なる複数のコンテンツを上映。中でもヒーリング番組は、仕事帰りに立ち寄れる夜の時間帯に設定するなど、様々な新しい試みを実施しました。評判が評判を呼び、その年の来場者数は約33万人に達しました。

“満天”を皮切りに、東京スカイツリータウンや有楽町マリオン、名古屋、横浜にコニカミノルタ直営館が次々にオープン、エンターテインメントとしてのプラネタリウムを確立していきました。また、全国のプラネタリウムでも、デジタル映像や複数プログラムを採り入れる動きが広がり、新たなプラネタリウムファンの獲得につながっています。

プラネタリア TOKYO Dome1

心に響くコンテンツを届けたい

時代とともに変化したのは、投映装置だけではありません。上映されるコンテンツも大きな変貌を遂げてきました。星々をつなぐ線と星座絵を描いて、星座の探し方や神話を語るスタイルは今でも定番ですが、番組に魅力を添えたり理解を深めたりするための画像は、スライド映写機による静止画から、ビデオプロジェクターによる四角い動画に変わり、1990年代後半からはドーム全体に動画が展開できるようになりました。技術的な制約がある時代でも、シナリオを工夫するなどできるだけ楽しめる番組を作ろうとしてきた制作者たちは、表現の幅が広がるとともに、さらなる魅力を追求していきます。

星座絵

コンテンツ制作を大きく変えたのは、直営館“満天”の誕生でした。それまでは、プラネタリウムを納入した館の担当者の要望に応えて制作する作品がほとんどでした。しかし直営館では、観る人々の生の反応を確かめながら、お客様が求めるコンテンツを自ら企画制作しなければなりません。そんな中から、著名なミュージシャンとのコラボや、ナレーションにタレントを起用した番組、ある国や地域にフォーカスしてその土地と星空を結び付けた番組などが生まれてきました。

アジアンヒーリング番組

もうひとつの挑戦が、子どもたちに人気のアニメキャラクターを起用した番組のグレードアップでした。当初の番組では、キャラクターは登場するものの、契約の関係で静止画しか映せない、いわば電子紙芝居でした。こうした状況に風穴を開けたのが、コンテンツ制作担当のある社員です。大手アニメプロダクションと交渉を重ねて、2009年、ついにフルアニメーションの番組を上映。それ以来、人気アニメのオリジナルストーリーをフルアニメーションで上映するコンテンツが、プラネタリウムの定番ジャンルとして確立されていきました。

バラエティ豊かなラインナップは、直営館だけでなく全国の様々なプラネタリウムで上映いただいています。さらに、コンテンツをクラウドサービスとして各館に配信する、サブスクリプションサービス「コネクテッド・ドーム・ライブラリー」も開始しています。

コネクテッドドームロゴ

機器の進化もますます加速しています。LEDパネルをドーム状に配置した映像システムを、名古屋と横浜の直営館に導入。プロジェクターで投映する方式とは異なり、ドーム全体が巨大モニターになるLEDドームシステムにより、画質、明るさ、比類のないコントラストレベルが実現できるようになりました。美しい星空と極めてリアルな画像の両立が可能になり、圧倒的な臨場感を生み出しています。いずれはコンサートのライブ配信、eスポーツなど、プラネタリウム以外の用途にも広がっていくのかもしれません。

バラエティ豊かなラインナップは、直営館だけでなく全国の様々なプラネタリウムで上映いただいています。さらに、コンテンツをクラウドサービスとして各館に配信する、サブスクリプションサービス「コネクテッド・ドーム・ライブラリー」も開始しています。

機器の進化もますます加速しています。LEDパネルをドーム状に配置した映像システムを、名古屋と横浜の直営館に導入。

コネクテッドドームロゴ

プロジェクターで投映する方式とは異なり、ドーム全体が巨大モニターになるLEDドームシステムにより、画質、明るさ、比類のないコントラストレベルが実現できるようになりました。美しい星空と極めてリアルな画像の両立が可能になり、圧倒的な臨場感を生み出しています。いずれはコンサートのライブ配信、eスポーツなど、プラネタリウム以外の用途にも広がっていくのかもしれません。

LED ドーム

最先端の映像システムであるプラネタリウム。しかし、星空を通じて感動を届けたい、という創業者からの想いは変わっていません。ある番組をご覧になったお客様から、こんなお手紙が届いたことがあります。「地球の誕生以来のさまざまな奇跡が重なって、私たちはここにいる。この番組を観て、私は1人じゃないと思えた。だから、生きようと思った――。」当時のスタッフは「これほどの力がプラネタリウムにあるのか」と驚き、この事業に取り組む決意を新たにしたと語っています。

心に響く美しい星空や宇宙への好奇心をかきたてられる空間を提供したいという想いのもと、我々はこれからもお客様の期待を超える感動を届け続けます。

満天ドーム内

2003年に経営統合する以前の2社はそれぞれ社名変更を重ねてきたため、経営統合直前の両社のブランドであるコニカ、ミノルタという呼称で統一しました。

プラネタリウムの年表

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