千松の郷様

2022年5月特別養護老人ホーム全80床にサブスクリプションプラン(月額制)にてご導入いただきました。
今回は、理事の奥田様と施設長の権藤様に導入のきっかけと効果、スタッフ様の変化についてお話いただきました。

社会福祉法人日野友愛会
特別養護老人ホーム 千松の郷
理事
奥田 将吉様(左)
施設長
権藤 友利様(右)
※2022年8月時点の情報です。

これからの介護はICTが必要

ICT・介護ロボットの導入を考えたきっかけはどのようなものでしたか

奥田様

5年ほど前から無線のWi-Fi環境の整備を始め、そこからスタッフが活用できるかも踏まえてタブレットやベッドセンサーなど色々試しました。また、施設が開所10年を迎えたタイミングというのもあって、ナースコールの入れ替えを考えたときに、次はナースコールとICTが一体になっているものがいいなと考えていました。

「将来を見据えたうえで導入を決めた」と伺いました

奥田様

もともと経営課題の解決というよりは、今後介護業界も含めて労働者人口が減っていく中で、本当に人からICTに移行できるのかというのがありますね。
最近で言うとスマート介護士みたいな話もありますけど、今までの介護のままだと他の業種と比較したとき魅力を感じないし、定着しないと思いました。そこでICTを運用する力を持った介護福祉士を育成するほうが先々のために良いのではと考えました。

決め手は映像通知とプライバシー配慮

映像通知に求めるところはどのようなところでしたか

奥田様

今ではだいぶ広がってきていますが、検討を始めた2020年頃当時これから映像を活用した見守りが本格化するという個人的な予想がありました。なので、あとからカメラをつけるよりは少し早い段階で進めていくのが負担も少なくて良いですし、県内の中でも率先して導入して事例を作りたいという気持ちもありましたね。
機能面で言いますと、サービスを比較する中で介護モラルが保たれる=スタッフ側から一方的に各居室を覗きにいけるようになっていないか、というところは確認していましたね。逆にシルエットとかモザイクの映像のものは実運用に支障が出るかもしれないと思いました。HitomeQ ケアサポートはプライバシーにも配慮しているし、事前に施設と家族間で同意書も取る手順を踏むというところもふまえて、安心だなと思いました。

収支としても40万プラス、業務としても余裕が生まれてプラス

今回はサブスク(月額制)でご導入いただきました

奥田様

今回あえて補助金を使うことは考えませんでした。ハイリスクを負うからハイリターンが返ってくるという思想ですね。だから正直なところ今は月額でスマートフォンも含めて費用が60万円前後、一方で今まで人件費として手厚くしていた部分が不要になったので合計100万円ほど削減できたので、簡単に計算しても40万円プラスですね。プラスアルファ産休に入ったり、育休明けのスタッフもおりますが特別負担なく業務が回せています。なので収支としてもプラス、業務としても余裕が生まれてプラスなんです。

これっておそらく多分設備導入で何千万一気に入れてしまったらこの感覚って持てないんじゃないかなって。人件費にかけていたところを設備にかかるという風に考えています。思いのほか1か月くらいで効果が出たので驚きました。

映像からの"気づき"でリスクを恐れすぎないケアへ

導入後、どのような変化がありましたか?

奥田様

まず単純に訪室の数は減ってきてます。システム自体の影響もありますし、ライブ映像で入居者さんがどれくらいの行動が出来て、どんな行動をとっているのか分かることで、今までは感覚や動きの様子から「この人転倒しはるかも」と思ってずっと怖さをもって対応していたのが、「この方意外に危険意識があるから大丈夫」という意識の変化が生まれています。転倒のケースもありません。実際に現場が「映像通知でリアルな状況が分かる→通知の種類を減らす→コールが鳴る対象者が減ってゆとりができる」という経験をたくさんできているのがいいなと。訪室が減ったのは、システムを入れている部分と、システムを入れたことで新たに分かった部分、この2つが大きな要因だと思ってますね。

スタッフのスキルアップや成長に繋がるシステム

導入から積極的にHitomeQ ケアサポートのデータを活用いただいていますね

奥田様

ベッドセンサーを使っていたときもデータは見ていたのですが、ケアに活かすまでには至りませんでした。HitomeQ ケアサポートのデータは、初めて見たときから現場で活用しやすいのと、伴走支援としてコニカさんの方でデータの状態も見ていただきつつ、運用進めて行けるので"コニカのスタッフさんがデータを見ている"という安心感と程よい緊張感が生まれてモチベーション向上にも繋がっていますね。以前よりも細かい介助部分が丁寧になったと思います。

最初にデータを見たときはどのような感想をお持ちになりましたか

奥田様

データを見たときの第一感想は、思いのほか現場はリスクリスクでやっていたんだなっていうのは強く感じましたね。 ちょっと話がそれますが、うちは元々センサーマット30床なら、多くとも10床ぐらいにしなさいという指示をよくしていました。要はセンサーマットを置くから安心というので誤解しているから。いっぱい鳴り続けてたらほんまに転倒するとき多分追い付かないよって。なのでデータを活用して最適な通知設定を行い、日々のケアに繋げたいですね。

月ごとに多職種でデータを使った打ち合わせ

今はどのようにデータを活用いただいていますか

奥田様

月に1回フロアごとの打ち合わせで、各部屋のケアコール数・離床通知・起床通知の3パターンを部署単位で出して使っています。このミーティングでは相談員のほか、ケアマネ、看護士、管理栄養士、プラスユニットリーダーという多職種のメンバーでデータを共有して、「この入居者さんの通知が多い理由は?」などを確認しています。スタッフの判断を聞いて問題なさそうであれば、「じゃあこの部屋は今のままにしておこう。この部屋は?」「このお部屋はなんとなく怖い気がするのでこの設定にしています」、そうしたら「もう1か月様子を見て、解除することも検討してみてね」という会話をしています。

これから冬場になると身体能力が落ち始める時期でもありますので、その時はもう少し様子を見る期間を長くするなどの判断が必要だと思います。今は私の方でその会議の中で逐一判断しながら、今は待ったほうがいいとか、今だったら大丈夫っていう話をしてますね。

介護の質を保ちつつも、楽しい雰囲気で溢れる施設に

今後目指す施設像を教えてください

奥田様

スタッフにはいつも"新しい介護"という形を自分たちで作っていこうと伝えています。ちょっと個人差があったり、施設の考え方も様々ですが、一生懸命というかタイムテーブル的に淡々と業務をこなすというよりは、もっとこう余暇時間を楽しめるように、楽しむということに重きを置きたい。うちは元々どちらかというと遊びの方に特化する施設です。一般的に遊びに特化している施設は少ないと思いますが、だからこそうちは人も定着しているし、退職者も少ない。その楽しい施設の雰囲気に加えて、新しい"シンプルな介護"、ICTを使った高品質な介護というのをプラスしたい。楽しい雰囲気でも介護のレベルが低かったら意味がないですからね。

施設を支える職種未経験出身のスタッフたち

新しい"シンプルな介護"そのわけとは

奥田様

従来の介護の状態でレベルを引き上げていくのは難しいと判断しました。いわゆるケアマネ研修とかユニットケア研修とかで学ぶことってどうにも机上の空論ぽいところがあまりにも多い気がしていて。これはうちのスタッフの過半数が吸収するの難しいなと判断したところから、ICTを使った新しい介護のシステムを作ったほうがいいと考えたんです。
今ってやはり3大介護の食事・入浴・排泄の部分をしんどいって表面的に強調されていますけど、そのハードルが下がってきたら、シンプルに介護していって、余暇部分を楽しく過ごす方向に持っていく。でもそれは今後を考えると常にICT自体を上手く運用しなくてはそれは成立しないなと思っています。
今後労働人口が減っていくことを考えると、未経験の人でも簡単に覚えやすい仕事・体制・ICTの導入も含めて業務をシンプルにしていくことが必要です。それは今後施設が人を確保しやすくなるためにも必要な変化だと思っています。
現状だとうちは5-6割未経験からの入職なんです。うちで定着して3年経って資格もとっているので資格者も増えてきています。 私自身ももともと飲食店で店長をやっていましたし、現施設長も他職種の出身なんです。

権藤様

施設長として私の目指す介護は理事のイズムを受け継いで奥田から私に変わっても、千松を変わらず守っていきたいと思っています。また私自身も職種未経験から来ているので、千松の介護スタイルを体現しているかなと思っています。今新しいスタッフの募集も職種未経験に絞って積極的に行っていますし、未経験からでもしっかり間口はあるということ、そしてたくさん未経験の人を介護の世界に連れていきたいなっていうのはありますね。

介護を他の業種に匹敵する魅力的な職業に

今後、介護をどんな業界にしていきたいですか?

奥田様

ありきたりな表現かもしれないですが"かっこいい"、若い世代の子たちが、「こういう仕事したいな」って思う施設・仕事にしたいですね。昔からアパレル業界の人気が高いのと同じように、介護も昔のイメージを払拭して、「この業界で私も働きたいな」って目指す若者が増える雰囲気づくりをしたいなと思っていますね。
介護業界の中で人材を探すというよりも、華やかな職業というとアパレルというイメージがあるように、「私もおしゃれに働きたいな」という選択肢にうちが入りたいなと思っています。